[背景]
気象庁の有感地震全データを東経北緯を0.1度単位深さを1km単位のグリッドに分けた場合、M7以上の震源、かつ段数2段目あるいは3段目以上のグリッド震源は12震源しか存在せず、12の特異震源と呼んでいる。その中の発生順で7番目の三陸沖M7.1の震源#SP12-7に関連して、マクロ的な震源域である三陸沖でのM7.0以上の解析を行い、特異震源との関連性を見出そうとするものである。
[データ範囲と震源データ(M7.0以上)]
気象庁データ(1919/01-2026/04)における三陸沖の全震源を含む矩形エリアからM7.0以上を抽出。#SR-1~#SR-18の18震源データを得て、これらを対象に解析を行う。このエリア内に12の特異震源#SP12-7 の2段目の初期値M7.1(#SR-9)も含まれている。
[M7.0以上の震源推移]
下の図1に示すように#SR-1~#SR-3までは時計周り、#SR-3で反転、#SR-3~#SR-5では反時計周り、#SR5で屈曲、#SR-5~#SR-8まで再び反時計回り、#SR-8で反転、#SR-8~#SR-12まで時計周り、#SR-12で屈曲、#SR-12~#SR-17で再び時計周り、屈曲して#SR-18に至る。#SR-9が12の特異震源の7番目、#SR-13がM9.0の東日本大震災の震源。
[M7.0以上の震源間相関直線とその傾き、およぴ幾何的中心]
15本の震源間の高相関式とその傾き・切片・(東経に対する)角度・相関係数は以下の通り。L1はほぼ完全相関でR² = 1。L4/L7はほぼ直交。
これら15本の相関式の傾きと切片の相関式から得られるメタ相関式y = -143.27x + 39.687の傾きと切片から震源群の幾何的中心の座標GCが得られる。一方、時系列に連続した2つの震源を結ぶ14本の線分群から得られる幾何的中心をGC(all)とすると各GCは以下の通り。それらの座標も図2で追加した
15相関式から算出 GC (143.27, 39.687)
17本の線分群から算出 GC(all) (142.93, 39.301)
その結果、幾何的中心GCは相関直線群が最多の5本が集中する#SR-5付近の南西側、GC(all)はL10沿いに3本の相関直線群が集中する#SR-7から更に南西側に位置している。
[M7.0以上の震源間相関直線L1~L15におけるパラメーターとの相関]
下表のように、追加パラメーターとして、一つ前のM7の地震との線分の傾き(北緯差ΔN/東経差ΔE)や線分傾きΔN/ΔEを追加した。
M7以上の震源間相関直線L1~L15における以外のパラメーター間の相関高めの図を以下に抜粋した。
L1(#SR-1/#SR-3/#SR-5)…東経 vs 北緯の相関係数は1。東経 vs M、北緯 vs Mの相関係数1の完全相関。
L2(#SR-1/#SR-6/#SR-14)…東経 vs 北緯の他、日時 vs 北緯差などでも高相関。特に北緯 vs 東経差ΔE は相関係数1の完全相関。
L3(#SR-1/#SR-7/#SR-12)…東経 vs 北緯の他、東経 vs 深さでも高相関。(東経 or 北緯)vs (深さ or 東経差ΔE)の4通りは相関係数が0.9997~0.9999の高相関。
L4(#SR-1/#SR-9/#SR-17)…東経 vs 北緯の相関係数1でL7と直交。
L5(#SR-2/#SR-5/#SR-16)…東経 vs 北緯の相関係数0.9997。
L6(#SR-2/#SR-6/#SR-18)…東経 vs 北緯の他、日時 vs 北緯差ΔNでも高相関
L7(#SR-3/#SR-12/#SR-13)…東経 vs 北緯の他、東経差ΔE vs 北緯差ΔNでも高相関。L4と直交。#SR-13(M9.0)を含む。
L8(#SR-4/#SR-9/#SR-14)…東経 vs 北緯の相関係数0.9901。ただし、#SR-9と#SR-14が近接。
L9(#SR-5/#SR-6/#SR-8)…東経 vs 北緯の他、日時 vs 線分傾きΔN/ΔEでも高相関
L10(#SR-5/#SR-7/#SR-10)…東経 vs 北緯の他、日時 vs 東経差などでも高相関
L11(#SR-5/#SR-9/#SR-14)…東経 vs 北緯の他、日時 vs 東経でも高相関
L12(#SR-6/#SR-10/#SR-11)…東経 vs 北緯の他、(東経 or 北緯) vs 北緯差ΔNなどでも高相関。東経差Δ vs 線分傾き ΔN/ΔEは相関係数1の完全相関。
L13(#SR-7/#SR-13/#SR-18)…東経 vs 北緯の他、北緯 vs 深さなどでも高相関。#SR-13(M9.0)を含む。
L14(#SR-7/#SR-14/#SR-17)…東経 vs 北緯の相関係数0.9985。
L15(#SR-13/#SR-15/#SR-16)…東経 vs 北緯の他、東経 vs 線分傾きなどでも高相関。#SR-13(M9.0)を含む。



[震源間相関とその物理的挙動の推測]
下の図3に直交するX字型共役断層等の主要な震源ラインのみ追記したものを示す。
#SR-1~#SR-5の推移
#SR-1(M7.0)から1933年3月の昭和三陸地震M8.1(#SR-3)に至る時計回りの推移。M8.1は明治以降では2011年3月のM9.0、1896年6月の明治三陸沖地震M8.2~M8.5に次ぐ規模。#SR-1(M7.0)はM9.0(#SR-13)と同じ震源深さ20km台で、2本の高相関震源ラインL1とL4の起点となっている。L1(#SR-1/#SR-3/#SR-5)は東経 vs 北緯、東経 vs M、北緯 vs Mで完全相関
(R² =1)となっており、#SR-3(M8.1)前後で、#SR-1の深さ20km台から#SR-3/#SR-5の0km(地表の開放端)への震源推移が位置だけでなく、規模Mについても予定調和的に推移、M8.1を境に時計回りから反時計回りで一連の活動が完結している様相。太平洋プレートの反時計回りの震源推移はM9震源の原因となった太平洋プレート北部の三陸沖周辺の沈み込み面にある海山等のスタッドが支点となり、以南側のプレートに反時計回りの力が加わり続けている事がその理由と推測。
L4(傾き-66.3°)はほぼ完全相関(R² =0.9999) で特異震源#SR-9を包含、ほぼ完全直交するL7(傾き24.0°)とX字型共役断層をなし、L7は主要なM8.1(#SR-3)/M9.0(#SR-13)を包含し、これらのX字型共役断層その後の震源推移に支配的な役割を果たしている。
#SR-5~#SR-10の推移
最多ハブ#SR-5~#SR-6の推移は#SR-5付近で、主要X字型共役断層のL4(傾き-66.3°)に平行な潜在的な断層と#SR-4/#SR-5(傾き22.7°)で形成されたX字型共役断層でエネルギーの逃げ場を失い、共役断層とほぼ45°方向(実際には約50°)の#SR-6に震源が反時計回りに推移したものと推測。この反時計回りの推移は#SR-8まで続く。#SR-9の特異震源はその特異性が示すように例外的に頑丈な構造が存在が推測され、#SR-9でのM7.1はその障壁の破壊によるモード変化を意味し、#SR-8での鋭角な折り返しは南側の空白域に沿っての推移が反時計回りから時計回りに反転したものと推測。#SR-7の20km以外は0kmで#SR-10まで推移。空白域外周の北側では#SR-3~#SR-10で0km付近の破壊が進行。
#SR-10~#SR-12の推移
#SR-10までの推移で0km付近の浅い震源の行き場を失ったエネルギーは次の地震で一気に深さ45kmの#SR-11まで推移。#SR-7以降の時計回りは空白域南側の#SR-12まで拡大。#SR-8と#SR-12の間を残すのみでほぼ周回した時点で、空白域地下のスタッドの持ち上がりを止めていた蓋が外れたような状態になり、さらには深さ方向にも亀裂が拡がったため、摺動面のスタッドが動ける状態に推移。
これまでの推移で0km付近の浅い震源と#SR-11の約50kmのやや深い震源までに蓄積されたエネルギーが極限に達し、L4/L7のX字型共役断層のうち、L7上で2011年3月に#SR-12(M7.3)が発生、さらに2日後にL15との交点で#SR-13(M9.0)が発生。#SR7~#SR12 (M7.3)までは時計回りが続いていたが、#SR-13(M9.0)以降で変曲して、余震モードに変化。#SR-13~#SR-17まで再び時計回り(~2012年12月)。#SR-14は最多ハブ#SR-9の西側で北寄りの残留ストレスを開放、その後は#SR-15~#SR17まではほぼL15上を推移、M9.0後のストレス調整が一段落した所でモードが変化、L15から外れて変曲、今年4月にM7.7が深さ19kmで発生。
[Dragon chartによるエネルギー状態推移変化]
Dragon chartは深さ毎の自然対数の度数と最大Mをプロットしたグラフで、GR則に基づく度数はMと等価の性質に基づき、各深さで度数が先行しているのか、最大Mが先行しているのかを図示することで深い場所から浅い方向のエネルギーの伝達状態も見てとれる。
下図は三陸沖エリアでの#SR-7(M7.2,20km)発生直後までのDragon chartで、80km~60kmではほぼ傾き1で互いの間隔もあり、深み方向からのエネルギーが淀みなく伝達されているが、50km~30kmへの伝達が滞っており、30kmでの規模更新も1939年のM6.9から約30年ぶりの更新でM7.2に留まっており、度数・規模も40kmと逆転している。前章の震源推移と照らし合わせると、30km/1km/10kmでの最大Mは各々1928年/1933年/1935年の#SR-1(M7.0)/
#SR-3(M8.1)/#SR-4(M7.1)での更新以降、約30年以上更新されていない。これらの更新以外のM7以上の#SR-2/#SR-5/#SR-6はいずれもDragon chartで規模が先行している1kmでの発生となっている。なお、1kmでの最大M8.1はいまだ抜かれてなく、依然として規模が先行した状態にある。
下図は2011年東日本大震災M9.0(#SR-13)および前震M7.2(#SR-12)の直前のDragon chartを示す。50kmの回数の増加と#SR-11の最大値の増加により、50km~80kmまでがほぼ傾き1の間隔の空いた分布に整列。一方、1km/10km/20kmでは最大Mは変わらず、度数のみ増加し、10km/20kmのプロットがほぼ重なり、縮退状態。そのため、10km~30kmが一直線上にあり、同期可能な状態。それ以前のM7以上の1kmでは#SR-10で蓄積エネルギーが飽和。
下図は#SR-13(M9.0)発生までのDragon chart。下図の10kmでは本震当日のM7.5(#SR-13)で上書き更新されているが、M9.0の2日前の#SR-12(M7.3)で最大M更新されて10kmの蓄積エネルギーも飽和した結果、当日の20kmでのM9.0の最大M更新に至る。最大Mの更新は最大蓄積エネルギーの更新と共に震源推移モードの変化をもたらし、それがGR則の成り立たなくさせる原因の一因とみられる。未だ10km/40kmで最大Mが50km~80kmの直線より低く、将来的に蓄積されたエネルギーにより、エネルギー伝達の停滞原因となるボトルネックを解消するように最大Mを更新する事になると予測される。